2011/5/1〜色々な「物語」(〜4/30・掲示板開設までの間に)

NHK・クローズアップ現代「人工知能」(米長邦雄永世棋聖VS CPU)

2月8日の「クローズアップ現代」である。

私はこの番組を東京渋谷区神南のNHKで視聴していた。正直言うと、些か「詰め込み過ぎ」の感は否めなかったというのが私の印象である。ボンクラーズを「人工知能」と呼ぶのであれば、この研究を極めること、或いは「A級棋士・タイトルホルダーに勝つこと」が、人工知能本来の進歩や担うべき役割に沿ったものになっているのかどうか、本当に意味のあることなのかどうか、理系と無縁な私には、そこのところが、どうもよくわからなかった。

米長邦雄永世棋聖へのインタビューが対局終了後、いつの時点で行われたのかわからないが、私には「悔しさの滲んだ氏の表情」が印象的だった。棋士が考える姿や表情は美しい。投了の直前から対局室を離れるまでの米長会長が映し出されたが、その映像を追いながら、改めて「人間」に勝って欲しかったと、そうしみじみ感じたのである。

ある意味、米長永世棋聖が本イベントに登場したのは「成功」だったと私は考えている。その根拠は以前にも何度か述べたが、一言でいうならば「米長永世棋聖が敗北したことによって、プロ棋士総体が弱い」という評価に繋がることはないからである。これがA級やタイトルホルダーになると俄然、話は変わってくるのだ。

ただ、馬さんが盤側の談話室で述べていたが、そう遠くない将来に「現役の高段棋士が敗れる」という光景は現実になるのかもしれない。しかし、私はそのことで、負けた棋士を「弱いとか駄目だとかプロにあるまじきとか」そんなことは考えないであろうことを確信した。対戦する相手はCPUであり、そもそも前提となる条件が全く異なるのである。

この番組、おそらくは世帯視聴率が10%から12%ぐらいはとるだろうから、関東地区では約177万世帯、関西地区では約70万世帯が「見た」という計算だ。露出というのは、誰がどう否定しようとも、現実の数字として存在するし、知名度も上がることになる。例えばこの番組をみた視聴者が将棋に関心を抱いてくれる。或いは人工知能の問題を考えてみるというきっかけにもなるだろう。そういう意味では悪い番組ではない。

ビストロ氏が

番組が「膨大な候補の中から次の一手を直感的に選ぶ」能力を大局観と定義している」ことに対し、大局観とは「ほぼイコール形勢判断」であり、「大局観をもとに、一手を直感的に選んで読む」ということでは、と、いくつかの掲示板で問いかけられている。

おそらくは「最善手を読む能力」「損得よりもスピードを重視する局面、すなわち大駒をぶった切ってでも、それで相手の王様が詰むのであれば、これは最善手になる」わけですから、まぁ、番組はそういうことが言いたかったのだろうと思っています。つまり「最善手を裏打ちされた思考により正しく読み抜く」ということなのでしょうね。

私は最近、特に地デジ化以降、CATVの加入率が加速度的に高まり、CS、BS、webなどの専門チャンネル化が進行する中にあって、連盟とLPSAとの露出差は今後も決して縮まることはないのだろうという点を極めて憂慮している。例えば指導対局ひとつとってみても、東京に限った話でいうなら、連盟の常駐師範制度などは価格も安く、それはそれで魅力的なのだ。LPSAでは棋士を指名できる「プライベートレッスン制度」の導入を始めたが、2時間2万円という指導料を個人がどれほど負担するだろうか、とは思う。

勿論、私は地道な普及活動を行っているLPSAを評価している。しかしパイの少なさは奈何せんどうしようもないのだ。GSPで強くなった女子が、もし本気で強くなろうと思うのであれば、奨励会か連盟女流に加入するという選択の方が魅力的だという現実がある。こういった状況に劇的な変化もみられず、所属プロも増えなければ、やかでは解散ということにもなりかねない。この程度の想像は誰にでもできる。だからこそ「ハングリーさ」を求めざるを得ないのだ。米長会長を馬鹿だアホだと言っているだけでは、実は全然解決しないのである。

GSPを経て女流棋士への道を選ぶと決めた女子に、奨励会経験を有する中井さんや、清水さんを師匠にもつ石橋さんは、果たして「LPSAに所属して」と言えるのだろうか。或いは本当にそう口にできるのだろうか。そんなことを考え出すと私は、どうにも悲しくなってしまう。

                             JC IMPACTU





トップへ
戻る
前へ
次へ




inserted by FC2 system